「中華人民共和国増値税法」
増値税は中国の最も重要な税である。1994年以降、中国は「中華人民共和国増値税暫定条例」(2017年国令第691号により第二次改正、以下「条例」という)と「中華人民共和国増値税暫定条例細則」(2011年国家財務部・国家税務局令第65号により改正)を繰り返して改正し、貨物(および一部労務サービス)の輸入・販売に適用される増値税制度を確立した。 その後、2012年から2016年にかけて、「営改増」(営業税から増値税に変更)政策が実施され、営業税を増値税に置き換え、増値税の税率調整、増値税控除のメカニズムの最適化や増値税の期末税額控除・還付制度の確立など一連の措置を通じて、現代的な増値税制度が基本的に構築された。
2024年12月25日、「中華人民共和国増値税法」(2024年主席令第41号、以下「増値税法」という)は第14期全国人民代表大会常務委員会第13回会議で可決され、2026年1月1日より施行される。立法の経緯とレベルから見ると、増値税法は従来の下位法である行政規定の「条例」から、上位法である法律として「昇格」させるものである。また、立法内容から見ると、増値税法は既存の税制の枠組みや税負担の水準を基本的に維持する上、課税取引の範囲、徴収率、控除対象外の仕入税額、税に関する優遇措置等の規定に対して調整を行う。
増値税法は計38条、総則、税率、課税対象額、税制優遇、徴収管理、附則の6章からなる。具体的な内容は以下の通りである。
国内における役務、無形資産、金融商品の販売に関する定義を明確化にし、潜在的な税務紛争リスクを抑えることを目的とする(第4条)。
「みなし課税取引」の範囲の縮小とともに、グループ企業間の無利子融資や本社と支社間の不動産の無償使用などの行為の性質に関する認定が変わる可能性があること(第5条)。
非課税項目が統合・最適化され、4項目に限定されること(第6条)。
小規模納税者に適用する税額計算の簡易方法を規定し、簡易方法が適用される場合の税率を3%とすること(第8条、第11条)。
納税者が異なる税率の品物または役務を兼業する場合、税率又は徴収率は主たる事業によって決定されるものとし、売上が混在する場合の税額計算方法を最適化すること(第13条)。
外国組織及び個人が国内で取引を行う場合、国務院の規定に基づき国内代理人に申告を委託する場合を除き、買い主を納税義務者とすること(第 15 条)。
仕入税額と売上額の定義を明確にしたこと(第16条と第17条)。
期末控除未済額の還付制度、控除対象外の仕入税額を明文化したこと(第21条、第22条)。
増値税の法定免除範囲、及び国務院により定められる税制優遇措置の範囲が画定されたこと(第 23 条ないし第 25 条)。
納税期間を変更し、また、貨物を輸入する場合、納税者が税関の規定に従って申告・納税する義務を負うとすること(第 30 条)。