「渉外知的財産権紛争処理規定」
2025年3月13日、国務院は「対外知的財産権紛争処理に関する国務院規定」(国令第801号、以下「規定」という)を制定した。規定は2025年5月1日より施行される。
規定は計18条からなり、知的財産権保護の強化、渉外知的財産権紛争処理の規範化、公民及び組織の合法的な権益の保護を図り、ハイレベルな対外開放及び質の高い経済発展を推進することを目的とする。具体的な内容は以下の通りである。
1.サービスの向上
国務院関連部門が国外知的財産権情報の検索サービス及び警戒体制を強化し、渉外知的財産権紛争処理の指導機関及びマニュアルを整備し、紛争処理に対する指導及び権利保護の支援を提供することを明確にしている。また、商事調停機関及び仲裁機関の渉外知的財産権紛争解決への参画を支援し、法律事務所、知的財産権サービス機関等の渉外知的財産権サービス能力の構築を強化し、公民及び組織に対して効率的かつ便利な渉外知的財産権紛争解決手段及び関連サービスを提供する。
2.企業能力の強化
企業に対し、法治意識の向上、内部規程制度の整備、知的財産人材の育成、知的財産権の保護及び活用の強化を求め、自らの合法的権益を積極的に保護することを求めている。同時に、国務院関連部門に対し、渉外知的財産権紛争の重点的な分野及び重要の流れを中心に企業向けの広報・研修を行い、典型事例を紹介しながら、渉外知的財産権紛争を法に基づいて処理する経験及び実践方法を紹介することを求めている。また、企業による渉外知的財産権保護・権利擁護のための相互扶助基金の設立を支援し、保険機関による渉外知的財産権関連保険事業の展開を奨励している。
3.海外調査・証拠収集の規制
規定は、中国国内における文書送達及び調査・証拠収集について、中国が締結または加盟する国際条約及び中国国内法に従って行うべきであることを明確にしている。国外に証拠又は資料を提供する場合、国家機密の保持、データセキュリティ等に関する法律及び行政法規を遵守し、法令上、主管機関の許可を要する場合は、所定の法的手続を履行しなければならないと規定している。
4.不公正待遇への対抗措置
規定は、外国が中国の公民又は組織に対し国民待遇を与えない場合、又は十分かつ有効な知的財産権保護を提供できない場合に、国務院の商務主管部門が法に基づき調査を行い、必要な措置を講じることができると定めている。また、外国政府が知的財産権紛争を口実に中国に対して抑制・圧迫を行ったり、中国の公民又は組織に差別的な制限措置を講じたりする場合には、国務院関連部門が法に基づき、相応の対抗措置及び制限措置を取ることができると規定している。