『薬品分野における独占禁止ガイドライン(意見募集稿)』
近年、中国の医薬品分野における独占行為が頻発し、薬物供給及び価格の安定性に影響を与え、市場の公正な競争秩序及び消費者の利益を損なっている。国家市場監督管理総局は遠大医薬品独占事件、揚子江医薬独占事件、上薬生化独占事件など約20件の医薬品分野における独占的協定、市場支配的地位の濫用、事業者集中事件(先声医薬による北京托畢西医薬に対する買収を条件付き許可することなど)を処理し、行政権力濫用による競争の排除、制限に係る11つの事件を抑止し、市場における公正な競争及び消費者の利益を保護した。医薬品分野の産業チェーンが長いため、関連する主体が多く、ビジネスモデルが複雑であることにより、原薬を含む医薬品分野では、独占行為がさらに発見し難い。独占禁止に対する監督管理をさらに推進し、2024年8月9日、国家市場監督管理総局は「薬品分野における独占禁止ガイドライン(意見募集稿)」を公布した。この意見募集稿の重要な内容は次のとおりである。
■医薬品分野における関連市場の認定方法の明確化:医薬品の関連商品市場を認定する際には、医薬品の用途または効果(適応症や機能・主治)、治療法(投与経路や使用順序など)、製品特性、禁忌や副作用、医師や患者の使用傾向、監督管理および医療保険政策などの要素を総合的に考慮し、需要代替の分析を行うことができる。供給代替により需要代替と類似した競争上の制約が生じる場合、市場参入、製造能力、製造施設の改造、技術的障壁などの要素に基づき、供給代替の分析を行うことができる。医薬品関連の地域市場を認定する際には、医薬品の製造および経営に必要な資格、監督管理の基準、医薬品の輸送や保管等に関する要素を考慮し、需要代替または供給代替の分析を行うことができる。
■リバースペイメント契約を構成する主な要素の明確化:①特許権者により後発薬特許出願人に提供する利益補償が、当該特許関連紛争を解決するためのコストを明らかに超え、合理的に説明できない場合。②後発薬特許出願人が特許無効宣告審判を請求した場合、特許が無効になる可能性が高い場合。③契約が特許権者の市場独占期間を実質的に延長し、後発薬の当該市場への参入を阻害し、若しくは妨げるおそれがある場合。
■消費者の利益を理由に独占協定の特例を主張する際の考慮要素の列挙:①医薬品の種類を増加するかどうか。②医薬品の安全性、有効性、入手しやすさを改善するかどうか。③医薬品の上市に係る期間が短縮されるかどうか。④消費者の医薬品費用負担が軽減されるかどうか。⑤公衆衛生の緊急事態時に、医薬品の効果的な供給が確保されるかどうか。
■「製品ジャンピング行為」に対する規制:市場支配的地位を持つ医薬品特許権者が、既存の特許技術を再設計して新しい特許を取得し、販売停止や回収などを通じて原特許医薬品から新特許医薬品に移行し(製品ジャンピング行為)、後発薬企業の競争を阻害する場合、市場支配的地位の濫用に該当する可能性がある。市場支配的地位の濫用行為に該当するかどうかを判断する際の主な考慮要素は以下のとおりである。①新しい特許医薬品が実質的な改良に該当するかどうか(例えば、単に剤形を変更し、または、2つ以上の医薬品を組み合わせただけで、用途や効果、安全性の改善が著しくない場合)。②元特許医薬品から新特許医薬品への転換が、後発薬の市場参入を妨げるかどうか。③原特許医薬品から新特許医薬品への転換の時に、原特許の有効期限が近づいているか、または、後発薬が市場参入を計画しているかどうか。④患者や医師の選択肢が実質的に制限されるかどうか。
■医薬品分野における事業者集中の審査要素の明確化:医薬品事業者の市場支配力を評価する際には、集中に関与する事業者の市場シェア、医薬品の代替可能性、医薬品販売市場や原材料調達市場を支配する能力、財力、研究開発能力、医薬品の販売許可資格、特許や専有技術、医薬品データの保有などの状況、医薬品産業チェーンへの関与や支配の状況などを考慮できる。また、関連市場の構造、他の事業者の研究開発能力・生産能力、顧客の購買力、供給者を変更する能力、潜在的競争者の市場参入による相殺効果などの要素も含まれる。