『中華人民共和国消費者権益保護法実施条例』
概 要
『中華人民共和国消費者権益保護法』は1994年から30年以上施行されている。近年の中国の急速な経済・社会の発展、とりわけプラットフォーム経済などの新しいビジネスモデルの継続的な発展に伴い、消費者の権益保護に生じる新たな問題を規制する必要が生じている。これを受けて、2024年3月15日、『中華人民共和国消費者権益保護法実施条例』(以下、「条例」という)が国務院により制定・公布され、虚偽宣伝、不公平な定型約款および事業者による技術的手段の濫用などの問題について明確かつ具体的な規定が設けられる。条例は2024年7月1日より施行される。
条例は7章53条からなり、主な内容は、事業者側の義務に関する規定の細分化と補足、オンライン取引に関する規定の改善、前払い式消費事業者の義務の強化、消費者の権益保護における政府の職責の明確化などである。
まず、事業者側の義務について、条例では以下の通りに定められている。事業者側は、その商品・役務が人身または財産の安全を保障する要求に適合することに加え、強制的法規定に反しないこと、かつ、使用時の通常の機能に影響を与えないことを確保する必要がある。確かに瑕疵が存在する場合には、その旨を告知する義務を履行しなければならない。ほかに、事業者は、消費者の知らない状況で、同じ商品・役務に対して、同じ取引条件下で異なる価格または課金の基準を設定してはならない。事業者は、消費者側の知らされる権利を保護し、消費者が十分な情報を得たうえでマーケティング活動を行わなければならない。
さらに、オンライン取引について、条例では以下の通りに定められている。事業者は、技術的手段を用いて、消費者に商品・役務の購入を直接・間接的に強制してはならず、また、消費者による他の事業者の商品・役務への選択を排除したり制限したりしてはならない。自動継続・自動更新等の方法によりサービスを提供する場合、消費者の注意を喚起するよう目立つようにしなければならない。ライブ配信等の方法により商品・役務を提供する場合、消費者権益保護に関する義務を履行しなければならず、ライブ配信プラットフォーム事業者は消費者権益保護に関する制度を確立・改善しなければならない。
最後に、前払い式消費事業者の義務について、条例により重点的に強化された。第一に、事業者は、前払い金を請求して商品・役務を提供する場合、消費者と書面による契約を締結し、商品・役務の具体的内容、価格または費用、前払い金の返済方法、契約違反の責任等について合意しなければならない。第二に、事業者は消費者との合意に従って商品・役務を提供すべきであり、品質を下げたり、任意に値上げしたりしてはならない。第三に、事業者が契約に従って商品・役務を提供しない場合、事業者は消費者の要求に従って契約を履行するか、前払い金を返済しなければならない。第四に、事業者は、事業上の重大なリスクが発生した場合、前払い金の請求を中止しなければならない。事業者が廃業またはサービス施設の移転を決定した場合、その旨を事前に消費者に通知し、義務を履行し続けるか、前払い金の未消費残高を返金しなければならない。