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外国投資家による上場企業に対する戦略投資管理弁法

 2024-12-29373

中国には、外国投資家が中国内資企業を買収することに関する主な法令として、「外国投資家の国内企業買収に関する規定」(2006年8日8日公布、2009年6月22日改正施行。以下「買収規定」という)がある。これによると、外国投資家による中国非外商投資企業(内資企業)買収は、「持分買収」と「資産買収」に分けられており、そのうち「持分買収」は、内資企業株主の持分を買い取り又は増資を引き受け、当該内資企業を外商投資企業として変更設立することを指す。

持分買収については、「外商投資産業指導目録」(外資参入ネガティブリスト)、設立の審査認可、納税及び外貨管理関連法に沿う必要があるほか、被買収企業が中国A株上場国内会社であるときは、さらに「外国投資家による上場企業に対する戦略投資管理弁法」(商務部、中国証券監督管理委員会、国家税務総局、国家工商行政管理総局、国家外貨管理総局令2005年第28号、2015年10月改正施行。以下「旧弁法」という)に従い、国務院証券監督管理機構で関連手続を行う必要があるものとされる。

旧弁法は、外国投資家が、株式流通改革を完了した上場会社及び株式流通改革後1に新たに上場した会社に対して、一定規模の中長期の戦略的な買収投資を通じて、当該会社のA株株式を取得する行為に適用される。
 しかし、中国では、2016年10月1日以降、外商投資企業の設立・変更(持分譲渡、増資等)が審査認可制から届出制に変更され2、さらに、2019年「外商投資法」及び関連する実施条例が相次いで公布され、外商投資企業への管理規制が大幅に緩和された。このような背景のもとで、商務部は関係部門と共同して、2018年から2020年にかけて旧弁法の改正検討作業を行い、複数回のパブリックコメント募集を経て、2024年11月1日に、改正「外国投資家による上場企業に対する戦略投資管理弁法」(商務部、中国証券監督管理委員会、国務院国有資産監督管理委員会、国家税務総局、国家市場監督総局、国家外貨管理総局令2024年第3号、以下「新弁法」という。)が公布された。新弁法は2024年12月2日より施行され、旧弁法は同日付で廃止された。

本稿では、新弁法の特に重要と思われる修正ポイントを簡単に紹介する。なお、特に表記しない場合、引用条文は新弁法の当該条文を指すものとする。

適用範囲(主体)の拡大

旧弁法では、戦略投資の主体が外国企業やその他の組織に限定され、自ら又はその親会社の国外における正味資産総額が1億米ドルを下回らず、もしくは管理する国外における正味資産総額が5億米ドルを下回らないことが求められていた。

 これに対し、新弁法は、戦略投資の主体に外国自然人※3が追加された。投資家の資産要件についても、上場会社の支配株主になる場合は、上記資産総額の条件を満たす必要があるものの、上場会社の支配株主でない場合は、自ら又はその親会社の正味資産総額もしくは管理する正味資産総額がそれぞれ5000万米ドル、3億米ドルに引き下げられた※4(第3条、第6条1項2号、同条2項)。

 

株式取得方法の拡大、持株比率の緩和、ロックアップ期間の短縮

旧弁法第5条では、外国投資家は、協議方式による取引又は第三者割当増資の方法によりA株上場企業の株式を取得できること、その取得する株式の比率は対象会社の発行済株式の10%を下回らないこと、ロックアップ期間(外国投資家が戦略投資により取得した上場企業株式を譲渡することができない期間)は3年間を下回らないことが定められていた。

 これに対し、新弁法では、上記株式取得方法に加えて、株式公開買付け(TOB)や法律で定めるその他の方式による株式取得が認められるようになった(第2条)。

 また、取得株式のロックアップ期間は12ヵ月に短縮され、最低保有比率も発行済株式の5%(協議方式とTOB方式で取得した株式の比率が上場会社発行済株式の5%を下回らないことを指し、第三者割当増資で取得した株式の比率要件は廃止されている)に緩和されている(第10条、第14条、第15条)。

 

株式交換における対価(対象株式)の拡大

買収規定では、外国投資家による内資企業買収の対価支払手段として、株式交換という方法が認められている。しかし、交換対象となる外国会社の株式は、国外の証券取市場で上場取引され、直近1年間における株価が安定していることが要求されている(「買収規定」第27条、第29条)。

これに対し、新弁法では、一定の場合には、非上場企業の持分も株式交換の対価として認められるようになった(第7条1項1号、4号)。具体的には以下のとおりである。

1.協議方式によりA株株式を取得する場合、株式交換の対価は、外国上場会社の株式に限定される。

2.第三者割当増資又は公開買付方式によりA株株式を取得する場合、上場か非上場かを問わず、株式を対価支払手段として利用することができる。

もっとも、株式交換の場合、A株上場企業又は同企業の従前株主が外国会社の株式を取得することになるため、A株株式の取得前に、中国国内における対外投資(ODI)手続を行わなければならず、外国投資家においても、所在国の外為法等に基づき対内直接投資手続を行う必要も生じると思われる。このような留意点はあるものの、非上場会社の株式交換という対価支払手段が認められたことにより、中国のA株上場企業が関係するクロスボーダーM&Aが増加することが予想される。

 

おわりに

新弁法は、本稿で触れた以外にも、外国投資家による内資企業に対する安全審査手続、事業者結合による独禁法に関する規制や届出手続、中国の証券専門会計士、弁護士などの専門家による調査及び報告書の提出、外国投資家による法律順守に関する声明書の提出、株式取得・変動による情報開示義務等が定められている。一方で、旧弁法で求められていた商務部による外商投資の審査認可は撤廃されており、関連取引の完了後、投資情報を所轄の商務部門に提出すれば足りるものとされ、手続が簡素化されている。

新弁法は、外国投資家による中国上場企業への戦略的投資に対する制限を緩和し、証券市場における外資の投資ルートを拡大することで、外国投資家による中国資本市場への長期投資を誘致することを目的としている。また、新弁法が、A株上場会社の企業再編やクローズポータM&Aの促進に積極的な役割を果たすことも期待される。

 

 

※1 中国株式市場の黎明期(1990年代)は、計画経済から市場経済への移行期にあり、上場会社の発行株式は「流通株」と「非流通株」 に分けられていた。「流通株」は、取引所に上場され、一般的に売買可能な株式であり、「非流通株」は、国家株(国有企業)、法人株、従業員株など売買できない株式である。なお、非流通株を市場で流通させるための改革が2005 年から進められた。

2 「外商投資企業設立及び変更の届出管理暫定弁法」(商務部令2016年第3号)により、2016年10月以降、「ネガティブリスト」以外の産業分野における外資参入は、審査認可が不要となった。

※3 なお、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾の投資家に加え、海外に定住している中国国民についても、A株上場企業に対して戦略投資を実施しようとする場合、新弁法を参照して適用するものとされる(新弁法第35条)

4 旧弁法では、外国投資家の資産が「国外」にあることが必須条件だったが、新弁法では、そのような制限は削除された



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